統合報告書

COMPANY INFORMATION

全社方針「環境経営」担当役員メッセージ

「環境プレミアム」の創出による
高付加価値で確固たるポジションを築く

東急不動産ホールディングス株式会社
執行役員
グループサステナビリティ推進部/
コーポレートコミュニケーション部担当

中野 由美

(2026年9月掲載)

創業時からの想いを受け継ぎ、進化する環境取り組み

当社グループの源流は、渋沢栄一らが緑豊かな理想の田園都市をつくるために設立した「田園都市株式会社」にあります。創業以来、環境や地域との調和を図るまちづくりを展開し、1998年に業界でも極めて早く「環境ビジョン」※1を策定しました。事業活動を通じて社会課題の解決を図り、持続可能なまちづくりに挑戦するDNAは、独自の価値創造として受け継がれ、進化し続けています。

2021年策定の長期経営方針では「環境経営」を全社方針に掲げ、「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」を重点課題に設定しました。バリューチェーンを活かし、全事業領域で取り組みを加速しています。

「脱炭素社会」への貢献を牽引するのが再生可能エネルギー事業です。2014年の参入以降、全国301施設(総事業数:2026年3月現在)を展開し、発電能力は国内トップクラスに成長しました。さらに、保有する施設で使用する電力を100%自社の再エネ電力に切り替え、2024年に国内事業会社※2として初の「RE100」を達成しました。

「循環型社会」では、既存建物の構造部分を活用する「再生建築」に取り組んでいます。2024年に渋谷で竣工したプロジェクトでは、新築比でCO2排出量と廃棄物を約9割削減し、環境負荷の大幅低減を実現させ、また、グッドデザイン賞も受賞しています。

「生物多様性」では、広域渋谷圏で建物緑化を進め、生き物の移動の中継地点となるエコロジカルネットワークを形成しています。東急プラザ表参道「オモカド」では、2012年の開業以来、生態系調査データを蓄積しており、それを活かして2023年には不動産業界初のTNFDレポートを発行しました。

これら事業活動は一例であり、過去からの実績と知見の蓄積は、お客さまや外部機関をはじめとするステークホルダーからの高い評価につながり、環境先進企業としての自覚と誇りを私たちにもたらしています。

外部評価の詳細は「サステナビリティサイト」をご参照ください。

※11998年環境基本理念策定、2011年環境ビジョンに改定

※2金融機関を除く

独自性の高い「環境プレミアム」を収益につなげる

私たちがめざすのは、単なる環境貢献にとどまらない、環境課題解決による新たな価値の創出です。「中期経営計画2030」では環境経営を再定義しました。「環境プレミアム」の創出を掲げ、環境配慮に安心安全・快適性といった社会課題解決の要素を掛け合わせ、独自性の高い付加価値を生み出し、持続的な成長と収益力向上をめざしています。

環境課題と事業成長の両立は、すでに成果として表れています。成長戦略のひとつである再生可能エネルギー事業では、発電所における開発・発電・運営管理・小売のバリューチェーンを構築し、事業を拡大しています。また、オフィスビルでは当社の環境取り組みに共感していただいた入居企業と協働で、2026年3月に環境先進パートナーシップ「team green」を立ち上げました。36社が参加※3し、入居企業にも応分の負担をいただきながら、ともに環境取り組みを加速する考えです。

また、国内初の「再生建築ファンド」を組成し、資金調達を実現しました。築古建物をリノベーションして収益性の高い店舗やオフィスへ転換することで、新築と同等の賃料を実現し、既存ストックの価値向上と経済的循環を進める画期的な取り組みです。

リゾート事業でも、環境価値を顧客価値へ転換する「体験型サステナブルリゾート」を推進しています。パラオのリゾートホテルでは海洋生物保護がお客さまの共感を呼び、東急リゾートタウン蓼科では、ホテルの稼働率向上に森林保全など環境施策が寄与しています。生態系保全活動は、その施設やエリアの価値向上に直結する取り組みであり、観光資源として極めて重要です。

環境先進の取り組みは、資産価値に加えて顧客の体験価値や地域価値を向上させる独自の強みです。これらの「未財務価値」を磨き上げて「財務価値」へと転換し、収益貢献と市場における強固なポジションを確立する。この「環境プレミアム」の創出を通じ、収益化を図るとともに企業価値向上を追求していきます。

※32026年4月末日現在

未来へ続く価値を創る、環境経営の実現

当社グループは、未来の主役である小中学生に向けた環境学習の出張授業を実施しています。「環境教育サポーター」として多くの従業員が自発的に参加し、また、表彰制度「サステナブル・アクション・アワード」には2025年度に203件の応募がありました。一人ひとりがオーナーシップを持ち、小さな成功事例から全社へスケーリングしていく。こうした活動を通じ、環境経営が組織文化として深く浸透し、具体的な行動へと結びついていることを実感しています。

人々の価値観が変化する現代社会では、豊かさや快適性と環境配慮の両立がこれまで以上に求められています。持続可能な社会を次世代へ引き継ぐためには、社会システムの変革とともに、一人ひとりに行動変容を促すことが不可欠です。

従業員が環境教育サポーターを務める環境学習の様子

当社グループはデベロッパーの枠を超え、再エネなどのインフラを提供し、働く・遊ぶ・暮らすといった生活のあらゆる場面に関わる事業を展開しています。お客さまに当社グループの施設やサービスを選んでいただくことが、環境価値の創出や社会課題の解決に直結する。そのような好循環を生み出すことこそが、私たちが推進する環境経営の将来像です。

当社がめざす「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」を実現することは、地球の未来を守ることでもあり、「環境プレミアム」の創出を追求するその先に、そのような壮大なビジョンがあります。グループ一丸で環境経営を深化させ、ステークホルダーの皆さまから選ばれ続ける存在として、ともにより良い未来へ進む好循環を築く。それが私たちの使命であり、挑戦です。