統合報告書

COMPANY INFORMATION

全社方針「DX」担当役員メッセージ

DXを成長の原動力として、
価値創出を加速させる

東急不動産ホールディングス株式会社
執行役員
グループ経営企画部/
グループCX・イノベーション推進部/
グループDX推進部担当

山根 英嗣

(2026年9月掲載)

強靭化フェーズ初年度で起きた「DXの位置づけの変化」

2026年度より、グループ経営企画部、グループCX・イノベーション推進部、グループDX推進部の担当役員となりました。全社方針にDXが掲げられた2021年度よりグループDX推進部統括部長として全社DX推進を牽引した後、サステナビリティや広域渋谷圏戦略などの領域で当社グループの価値創造に携わってきましたが、再びDX推進を担います。

強靭化フェーズの初年度となった2025年度は、当社グループにおけるDXの位置づけが大きく転換した1年になりました。従来の「デジタルを活用した業務プロセスの効率化や生産性向上」という試行段階から、データやAIの活用を前提に、「いかに価値創造につなげるか」を起点に考えるフェーズへと明確に移行したという手ごたえを感じています。

この転換を支えているのは、当社グループの事業特性です。都市開発から管理・運営、流通まで手掛ける事業ウィングの広さを持ち、顧客接点の最前線まで関与するビジネス構造は、DX推進における競争優位の源泉となっています。豊富なタッチポイントを通じて継続的に蓄積されるデータやノウハウといった知的資産をCDP※などのデータ基盤によって横断的に結びつけ、グループ全体として活用可能な価値へと転換していくことが、DXの役割であり私の重要な使命であると認識しています。

カスタマーデータプラットフォーム(顧客データ基盤)

こうした事業特性を活かしながら、社内独自の生成AIである「TFHD Chat」の活用や、TFHD Digital(株)(以下、TFHD Digital社)のデジタル人財が個別業務に伴走する体制の構築を通じて、意思決定や業務プロセスそのものが変化しつつあります。DXが単なる効率化施策ではなく、事業変革の基盤として社内に浸透しつつある点は、重要な一歩を踏み出した表れだと捉えています。

DX推進にあたっては、「EX(従業員体験価値)」「CX(顧客体験価値)」を好循環させて「BX(ビジネスモデル変革)」の実現をめざすDX戦略や、組織体制と人財育成、および複数のDXプロジェクトが高く評価され、3年ぶり2度目となる「DX銘柄2026」への選定にもつながりました。

AI活用を起点とした「EX」と「CX」の好循環による価値提供

DXはEX・CXと事業価値向上を同時に牽引する起点として機能し始めています。働きがいを実感する従業員による質の高いサービスが、お客さまの感動体験を生み、さらに従業員のモチベーションを向上させる。この好循環を加速させるのがDXであり、その原動力となるのがAIの積極的な活用です。創造的業務の転換に向けては、現場業務とデジタルスキルを併せ持つ「スーパーブリッジパーソン」が牽引し、特許取得済みの技術なども実装した社内専用生成AI「TFHD Chat」や、不動産情報の可視化で意思決定を飛躍的に高速化する「地図DX」を現場に定着させました。グループ全体に生成AIやデジタルツールの活用が浸透することで、年間数万時間規模の圧倒的な業務効率化と生産性向上(EX向上)を実現しています。

生産性向上によって創出されたリソースや時間を、より付加価値の高い業務へとシフトさせることで、CX向上へとつなげています。現在はCDPの構築が完了し、全社でさらなる活用を図るべくグループ各社の情報集約を進めています。グループ各社・各サービスに蓄積された顧客情報を横断的に統合し、顧客解像度を高めることで、個別ニーズへの対応にとどまらず、パーソナライズされた感動体験を提供していきます。

ソフト起点のビジネスモデル変革「BX」とDX人財育成

EXとCXの好循環を加速させた先にあるのが、BXの実現です。従来のハード(不動産)開発に依存した収益構造にとらわれず、デジタルサービスという「ソフト」を通じて社会課題を解決し、新たな収益源を獲得する事業モデルの創出にも取り組んでいます。

その象徴的な事例が、北海道倶知安町で提供しているデジタル町民証明「Kutchan ID+」です。本サービスはTFHD digital社の実装力と、CVC出資先の特許技術などを掛け合わせたオープンイノベーションにより約1年で短期実現されました。人気観光地において町民がお得な優待を受けられる本取り組みは、町民の約4人に1人が登録し、第43回IT賞も受賞するなど社会的に高く評価されています。これは社会貢献にとどまらず、これまで不動産関連事業を主力としてきた当社にとって、システム利用料などで収益化を図る新たなビジネスモデルです。

こうしたビジネスモデルの変革を各現場から創出するためには、既存事業への理解とデジタル知見を兼ね備えたブリッジパーソンが不可欠であり、前年度より開始した「スーパーブリッジパーソン」制度をはじめ、人財育成にも注力しています。2030年度までに10,000人のDX推進人財を育成する目標に対し、すでに9,910人の育成を達成し、目標を大幅に上回る進捗です。高度デジタル人財を外部から獲得するTFHD digital社との組み合わせで、変革を担う人財を育成・獲得し、DXの取り組みを一過性の施策にとどめることなく、継続的な価値創造へとつなげていきます。

攻めと守りのDXで、持続的な企業価値向上へ

DX戦略の核となる積極的なAI活用による「EX・CX」の好循環を今後はグループ全体へ深く浸透させ、経営における確固たる「強み」へと育てていきます。

一方で、デジタルやAIの活用が拡大するほど、情報管理やセキュリティの重要性は高まります。当社グループではゼロトラストネットワーク基盤を2年前倒しで構築完了したほか、情報セキュリティ委員会を通じたAIガバナンスの徹底など「守りのDX」にも万全を期しています。こうした守りの土台を固めたうえで、「攻めのDX」を進化させ、ビジネスモデル変革とその先の新たな収益機会の獲得につなげています。引き続き、DXによって当社グループの強みを最大化し価値創造を加速させることで、企業の持続的な価値向上を実現していきます。