東急不動産ホールディングスが行う環境取り組みを詳しくご紹介
GREEN PIONEER NEWS

入居者同士の交流と資源循環の学びを得られる
「サステナブル」な学生レジデンス

  • # 循環型社会
  • # サステナブルな学生レジデンス
公民連携で推進する蓼科の「もりぐらし」

東急不動産が開発し、学生情報センターが運営する「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」は、学生向けに特化した学生レジデンスシリーズ。安心安全のセキュリティや、入居者同士の交流をコンセプトにしている。エントランスから各個室までの間やエレベーターホールなどにさまざまな共有スペースが設けられ、自然発生的にコミュニケーションが生まれる仕組みが設計段階から盛り込まれているのだ。人間関係の希薄化が社会問題となってきている中、充実した学生生活を送ることができるような工夫に満ちている。こうした点が評価され、学生レジデンスブランドとしては異例の「グッドデザイン賞」を2020年に受賞している。2022年1月に竣工した大阪府東大阪市の「キャンパスヴィレッジ大阪近大前」は、251室とシリーズ最大級の室数。テーブルや椅子など共有部の家具には国産木材や再生資源が使われており、実際に使うことで資源循環に触れて学ぶことができるサステナブルな施設になっている。

自由と交流を兼ね備える工夫でグッドデザイン賞

少子化で18歳人口は年々減少しているが、女子進学率の増加などで都市部の大学進学者数は増えている。そうした中、良質な学生向け住宅の供給不足という問題が浮上してきた。また、スマホなどの普及でIT化が進み、暮らしは便利になる一方、リアルな人と人とのコミュニケーションの希薄化が現代社会の課題となりつつある。これまでの学生向けの住宅は、学生が借りられるマンションやアパート、学生寮に限られていた。一人暮らしスタイルのマンションやアパートでは、入居者間のコミュニケーションの機会は限られている。学生寮は、独特のコミュニティがある所が多いが、それが息苦しくて苦手と感じる人も多い。そこで東急不動産が2018年に開発したのが「キャンパスヴィレッジ」。一人暮らしの自由、自立と、学生同士のコミュニティを備えた学生レジデンスブランドだ。

キャンパスヴィレッジ大阪近大前

キャンパスヴィレッジ大阪近大前

このシリーズでは、カフェテリアやリビングキッチンなどの共用スペースを配置。入居者同士が自然に交流できる空間を設計に盛り込んでいる。また、エントランス、1階エレベーターホール、各個室に至るまで「トリプルセキュリティ」を採用しており、管理人が常駐している物件もあり、安心安全のセキュリティを提供している。学生寮などにあるような門限もなく、入居者は普通のマンションと同じように自由に出入りできる。設備の不具合や健康相談なども24時間コールセンターで対応する安心・安全なサービスがある。さらに、事前オーダー制で、管理栄養士監修の健康的な食事をとることもできる(一部物件を除く)。

1階カフェテリア

1階カフェテリア

一人暮らしと学生寮の良さを兼ね備える個室

一人暮らしと学生寮の良さを兼ね備える個室

「キャンパスヴィレッジ大阪近大前」は、西日本一の学生数の近畿大学から徒歩9分の所にある。周辺には、近畿大学のほか、大阪商業大学、大阪樟蔭女子大学など多数の大学が集まっている。

東急不動産住宅事業ユニットの吉永功希さんは「キャンパスヴィレッジシリーズは、入居する学生同士のコミュニケーションと交流がコンセプトです。中でも大阪近大前は当初、施設前の広場を活用してマルシェなどを行って地域との交流を大切にしたいと企画しました」と語る。新型コロナウイルスの感染拡大で、地域との交流は保留となったが、入居者やその友人などがカジュアルに交流できる場として、さまざまな工夫が取り入れられた。

「1階部分約400㎡すべてが共有部分。食堂となるカフェテリアに続くシェアキッチン、ラウンジのほか、77型の大型テレビがあるシアタールーム、ボードゲームやカードゲームが用意されたプレイルーム、勉強に専念できるスタディールームなどが配置され、入居者同士のコミュニケーションが自然に生まれるように考えられています」と吉永さん。それだけではなく、4月にはウェルカムパーティー、12月にはクリスマスイベントなど、随時イベントを企画し、リアルな部分で交流する機会が設けられている。

大型テレビを備えたシアタールーム

大型テレビを備えたシアタールーム

特にこの大阪近大前で特徴的なのが、1階共有部分に再生資源などを使ったテーブルや椅子が配置されていることだ。吉永さんは「SDGsが注目され、環境配慮の意識はますます高まっています。よりカジュアルな学生同士の交流を生み出す場の創出と、サステナブルな取り組みの実現という2軸のもと、人や社会、環境に対して倫理的に行動する『エシカル』という概念を取り入れてアップサイクルや再生資源などを利活用した内装のデザイン・設計をしている株式会社船場さんとタッグを組んで共有部分をデザインしました」と語る。

再生資源活用のサステナブルな家具

船場でエシカルデザイン本部を牽引する神戸暁さんは「建築工事はCO2の排出が非常に多いため、業界として削減に真剣に取り組まれていますが、内装分野についてはまだまだ始まったばかり。私たちの会社もエシカルに力を入れ始めて2年目となります」と語る。

船場でエシカルデザイン本部を牽引する神戸さん

船場でエシカルデザイン本部を牽引する神戸さん

エントランスから入るとすぐ、入居者が食事をしたり、くつろいだりできるカフェテリアがある。そこで最初に目に入るのが、脚として三つ又の木の幹をそのまま使った存在感のあるテーブル。「岐阜県飛騨の森で見つけた、幹が三つに分かれた木を見てインスピレーションが浮かびました」と神戸さん。カフェテリアの奥に位置するラウンジには、ヤマザクラの切り株をそのまま使ったローテーブルもある。神戸さんは「初めは丸い切り株のテーブルを作ろうと考えていました。ところが実際に飛騨の木材集積場に行ってみると、ゴロンと転がっている木が気になりました。長い年月で3本が合わさって一つの幹になった不思議な切り株。3Dでスキャンして、その後ミーティングを重ねる中で、この木を利用しようと決めました。三つ又の幹もヤマザクラも、木材として流通することはなく、実際に現地に行かないと見つけることはできません。森や集積場にいくと、いろんな形の木があります。その形をどのように生かしていくかを考えています」と話す。

三つに分かれた幹を使ったテーブル

三つに分かれた幹を使ったテーブル

ローテーブルも切り株の形をそのまま生かした

ローテーブルも切り株の形をそのまま生かした

普通なら活用されない素材や、用済みで捨てられてしまう材料を新しい視点で再生するアップサイクルは、「エシカルデザイン」の大きなテーマだ。同じラウンジには、この施設の工事現場で電気工事用の配線ケーブルを巻いていた木製ケーブルドラムを使ったテーブルも。その周りに配置されたカラフルなチェアは、学校で使われていた図工椅子を再利用したものだ。また、古タイヤに麻縄を巻き付けた椅子や、海上輸送で使用される木製パレットを再利用したソファもある。こうした木製パレットは多くが片道だけの使用で破棄されているという。ラウンジの壁に掲げられた木製のアートパネルは神戸さんのお気に入り。サクラ、カバ、ケヤキ、ホオノキなど6種類の広葉樹の端材をデジタルでデザインして貼り合わせたものだ。神戸さんは「サステナビリティという言葉が良く言われるようになってきましたが、押しつけにならないよう、使う人に親しんでもらえるものを作りたいと考えています」とし、「エシカルデザインは未来のことを考える活動です。この新しい取り組みが始まっていることを知ってもらい、ここで暮らす学生が、安心して前向きに未来に向き合える、そんな場になってもらいたい」と話している。

木製ケーブルドラムをテーブルに再利用

木製ケーブルドラムをテーブルに再利用

大学と連携して付加価値向上

また、このレジデンスでは、産学連携の新しい試みとして、近畿大学経営学部経営学科教授・布施匡章ゼミと、「学生目線の販促活動」「入居者同士の交流創出の仕組み作り」というテーマで共同研究を行った。販促活動では、ゼミの学生たちがこのレジデンスの魅力をSNSで発信したほか、紹介動画を作った。プレイルームでゲームをしたり、ラウンジに設置された電子ピアノを弾いたり、カフェテリアで食事をしたり。実際に入居してどんな暮らしになるかを楽しく紹介する動画で、学生情報センターが運営するナジック近畿大学前店の店頭で流された。交流創出の面では、入居者が不要になった本やお勧めの本などをシェアする「シェアライブラリー」や、1階エレベーターホールの壁に設置された近畿大学周辺の商店街のマップアート、2~11階のエレベーターホールに設置されたコミュニケーションボードへの日本地図掲示などが、学生からの提案で実現した。

近畿大学との産学連携に取り組んでいる

近畿大学との産学連携に取り組んでいる

お勧めの店などを書き込めるマップアート

お勧めの店などを書き込めるマップアート

ナジック近畿大学前店店長の松井智成さんは「現役の学生たちに学生レジデンスの入居促進に協力してもらったのは初めての試みでしたが、リアルに近い生活を感じられる動画を作ってもらい、新入生やその家族にも、新生活のイメージがつかみやすいと評判でした。実際に入居が始まって1年ほどですが、入居者同士の交流だけでなく、入居者の友人も集まるなど、交流の輪が広がっているようです。入居者からは、普通の一人暮らしでは体験できないことが体験でき、食事もおいしいと好評を得ています。他の大学とも連携を深めており、今後も学生たちの声を反映させて、皆さんのキャンパスライフを安心安全に、より充実させられるよう、管理運営しながら支えていきたい」と語る。

ナジック近畿大学前店の松井店長

ナジック近畿大学前店の松井店長

実際に入居している学生たちにも話を聞いてみた。香川県出身で近畿大学理工学部に通う女子学生は、入居を決めた理由について、「学校に近いこと、食事がついていてセキュリティも安心できること、それに交流の場がいろいろとあることから、親と相談して決めました」と話す。また、近畿大学法学部に通う男子学生は、「広島出身で、友人がいませんでしたが、入居してまもなく、ラウンジを通り掛かったときに『一緒にボードゲームやろう』と声を掛けてもらい、すぐに友人になりました」という。

再生資源を活用した家具などサステナブルな取り組みについて、この女子学生は「ふだんは素材に触れる機会は少ないので、自然がとても身近に感じられます。どういう風にしてこの家具が出来たのかなど、これまで気づかなかったことが分かって、物の見方が変わりました」、男子学生は「再生資源を活用するのはとても良いことだと思います。プラスチック製品はほとんどが使い捨てになってしまいます。そうではなく、資源を大切にしたいと改めて思いました」と話す。このレジデンスに入居したことで、学生たちの日々の暮らしや意識にも少なからず影響があったようだ。

近畿大学学生が制作したキャンパスヴィレッジ大阪近大前のプロモーション動画

取材にご協力いただいた皆様

  • 北原 一秀
    株式会社船場
    執行役員
    エシカルデザイン本部長
    神戸 暁
  • 元木 誠
    株式会社学生情報センター
    近畿大学前店長
    松井 智成
  • 徳田 圭太
    東急不動産株式会社
    住宅事業ユニット
    関西住宅事業本部
    吉永 功希
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