東急不動産ホールディングスが行う環境取り組みを詳しくご紹介
GREEN PIONEER NEWS

豊かな森と共存するために
蓼科発「もりぐらし」のサイクル

  • # 循環型社会
  • # 森を未来につなぐリゾート
東急リゾートタウン蓼科

森を想い、未来につなぐ―――訪れる人と地域をつなぎ、都市と自然をつなぎ、そして豊かさに満ちた環境を次の世代につないでいく。それが、東急リゾーツ&ステイ株式会社のSDGsブランド『もりぐらし』のコンセプトだ。東急リゾーツ&ステイは、「森で食べる」「森と遊ぶ」「森に泊まる」「森で癒す」「森で働く」「森で暮らす」をテーマに、自然と親しみ、森とともに過ごすさまざまな環境への取り組みと新しいリゾートライフの展開を図っている。八ヶ岳を望み、古くから湯治場として栄えた蓼科高原に1978年に開業した「東急リゾートタウン蓼科」。『もりぐらし』は2017年、約200万坪もの広大な敷地に、別荘、ホテル、ゴルフ場、スキー場などを備えたこの複合リゾートから始まった。

カラマツの森を保全 災害を防ぎ豊かな森に

「きっかけは、2012年7月の集中豪雨でした」と、東急リゾーツ&ステイ地域創造統括部の徳田圭太さんは語る。この豪雨により、東急リゾートタウン蓼科内で、複数の土砂災害が起きたのだ。「タウン内の森は、戦後に植林されたカラマツの人工林です。人工林は定期的に間伐などの保全措置を行わないと、森の持つ本来の力が弱ってしまうのです。東急リゾートタウン蓼科では、開発以来そうした保全措置がほとんど行われないままになっていました。それが、土砂崩れなどの災害につながった原因の一つではないかと考えられました」と徳田さん。

東急リゾーツ&ステイの徳田さん

東急リゾーツ&ステイの徳田さん

森林という自然そのものが、リゾート地の大きな財産だ。人々は自然に触れ、心と体をリフレッシュするためにリゾート地にやってくる。ところが、土砂崩れが起きると、人や施設に被害を及ぼす恐れがあるだけでなく、リゾート地としての魅力が損なわれてしまう。森林を守り、災害を防ぐことが、リゾート地としての価値を高めることになる。2012年の被災を機に、どうしたら、この大切な自然を守っていけるのか、さまざまな検討が始まった。その結果、「まもる」「つかう」「つなぐ」の持続可能な地域循環のサイクルが立案され、2017年に『もりぐらし』と名付けたこのプロジェクトが始まった。

「まもる」「つかう」「つなぐ」のサイクル

「まもる」「つかう」「つなぐ」のサイクル

まず「まもる」。これまで民間企業による自然保護活動というと、社会的責任として無償で行われることが多く、費用はすべて企業の負担となっていた。だが、それでは、活動を継続し、未来へつないでいけるのか不透明。継続するには、事業として採算がとれることが必要だ。このためプロジェクトは、林業としての収入を活動に充てることを目指した。まず、林業経営体としての認定を受け、森林状態の状況を調査・把握し、中長期の保全施業計画を立てた。林野庁の補助事業も活用し、素材の売り上げと合わせて実質負担金無しで10.9㏊の間伐をすることができた。

次に「つかう」。具体的にはタウン内のゴルフ場で浴室の湯を沸かすために使用していたボイラーを、チップ化した間伐材を燃料とする「バイオマスボイラー」に入れ替えた。それまでのボイラーは灯油が燃料で、1年に110㌧相当の二酸化炭素を排出していたが、バイオマスボイラーに替えたことで、すべての二酸化炭素排出を抑制できることになった。この事業は、環境省の再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業に採択され、地方公共団体との強い連携で、地域への普及・拡大を進める計画があることなどから民間企業としてはまれな、補助率3分の2が適用された。徳田さんは「燃料は間伐材を活用するため、以前のボイラーでかかっていた灯油代1年約440万円を節約できます。完全燃焼で、後にはわずかな灰が残るだけ。この灰は、肥料としてゴルフ場にまいていますので、無駄になりません」と説明する。

そして「つなぐ」。間伐された森林は、光が差し込む美しい森林となった。そこで、タウンを訪れた人たちにこの美しい自然を満喫してもらおうと、森の魅力、森で過ごす時間のすばらしさを、「森で食べる」「森と遊ぶ」「森に泊まる」に集約した「もりぐらしエリア」をタウン内の中央部に設置した。

ゴルフ場に導入した「バイオマスボイラー」

ゴルフ場に導入した「バイオマスボイラー」

チップ化した間伐材を燃料として活用する

チップ化した間伐材を燃料として活用する

「もりぐらし」で自然を楽しむ

「食べる」の代表は、「グラマラスダイニング」。大人数で楽しむバーベキューから、本格的なテントを導入したグランピングまで、それぞれの楽しみ方ができるエリアになっている。この設備は、森のすばらしさを子供たちに伝える森林教育や、婚礼会場などとしても活用されている。

「遊ぶ」は「フォレストアドベンチャー」。森林内の樹木をつなぐ、木や綱などで作られた通り道を、バランスをとりながら進んでいく、自然共生型アドベンチャー。森そのものに触れて子どもから大人まで楽しめるアウトドアパークになっている。

「泊まる」としては「クラスベッソ」がある。昼は別荘の住宅展示場だが、夜は実際に宿泊でき、別荘体験をすることができる。また、「グラマラスダイニング」でも、スロベニアから輸入したテントでの滞在を楽しめる。

グラマラスダイニング「THE ROOF」

グラマラスダイニング「THE ROOF」

フォレストアドベンチャー

フォレストアドベンチャー

2020年にはさらに、「森で癒す」「森で働く」「森で暮らす」を加え、「食べる」「遊ぶ」「泊まる」と合わせて6つのカテゴリーにまとめ、さまざまな目的に合わせた楽しみ方を通して豊かな自然に触れることができる森での過ごし方を提案するようになった。

「癒す」は、深い緑に包まれた森で、心と体を解き放つ豊かなひととき。「スパリゾート鹿山の湯」は、肌触りが柔らかい天然温泉。疲労や神経痛などに効果があり、澄んだ森の空気に包まれながら入浴する露天風呂もある。「リラクゼーションサロンRYFIA」では、もみほぐし、フットケア、ヘッドマッサージなど人気のスパメニューを誰でも利用出来る。このほか、敷地内にはホテルガーデンや自然道があり、森林浴をしながら散策できる。

「働く」はリゾートでの新しい働き方の提案。「蓼科東急ホテル」ではワーケーションプランを用意。コテージやクラスベッソでは、自然を身近に感じながらワーケーションができる。さらにグラマラスダイニングの「THE ROOF」は野外空間でありながら大屋根があり、大人数での研修などにも活用できる。2021年には新たなワーキング施設「ワークラボもりぐらし」も開設した。

「暮らす」は、自然との共生を続けてきた豊かな別荘地体験。「クラスベッソ」での別荘体験のほか、「蓼科東急タウンセンター」では、さまざまな情報提供で、本格的なリゾートライフを提案している。

ワーキング施設「ワークラボもりぐらし」

ワーキング施設「ワークラボもりぐらし」

徳田さんは「間伐を始めて5年。森林組合に依頼して行ってきました。ただ、林業の衰退はこの地域も例外ではなく、担い手不足が今後の課題になっています。タウン内の人工林であるカラマツをさらに活用し、森のストーリーを盛り込んだブランドとしてオリジナル家具を開発するほか、都市部の開発や住宅などに利用してもらう『木材供給センター』のような役割を果たせるようにしていきたい。木材として利用の幅が広がることで、収益化でき、担い手を増やすことにつながっていきます。また、間伐や薪作り、植林などもお客様が体験できる屋外環境アクティビティーとして楽しんでもらえるようにできれば、と考えています」と語る。

また、東急不動産ウェルネス事業ユニットの石原宏基さんは、「『もりぐらし』は、今や蓼科だけの取り組みでなく、東急リゾーツ&ステイのSDGsブランドです。東急不動産ホールディングスグループ全体として、脱炭素、循環型社会、生物多様性といった面に重点的に取り組んでおり、同じ方向を向いていると言えます。東急不動産としてもグループの一員として『もりぐらし』も積極的に支援していきたい。」と話す。森林を適切に間伐することで、里山の生物たちが住みやすい環境を作ることができる。東急不動産と東急リゾーツ&ステイは、それぞれの地域での固有の生態を守るだけでなく、外来生物駆除活動なども各地のNPOやボランティアとともに展開している。

東急不動産の石原さん

東急不動産の石原さん

CO2削減で国のJ-クレジット認証受ける

東急不動産と東急リゾーツ&ステイは、蓼科地区の森林保全の取り組みなどが高く評価され、企業などが削減した二酸化炭素を国が認証する「J-クレジット制度」で、森林経営活動に基づく認証を総合デベロッパーとして初めて2022年6月に受けた。森林経営活動に基づくクレジットは、間伐などの適切な森林経営を行い、森林の成長を促すことで、大気中の二酸化炭素を吸収する量を増加させたことを評価する仕組み。東急不動産と東急リゾーツ&ステイの取り組みは、年間約50㌧の二酸化炭素吸収量が見込まれ、これがクレジットとして認証される。東急不動産は、創出されたクレジットを、企業活動で排出される二酸化炭素と相殺する「カーボン・オフセット」に使用するほか、都市部の開発でも環境配慮型の再生建築などに活用する予定だ。

タウンを囲むカラマツの森が二酸化炭素を吸収する

タウンを囲むカラマツの森が二酸化炭素を吸収する

石原さんは「J-クレジットは認証を受けたばかり。現状はまだまだだが、これからさまざまな形で活用を考えていきたい。カーボン・オフセットだけでなく、将来的にはクレジット売却による収益化も視野に入れたい」という。

徳田さんは「今後は、お客様の二酸化炭素排出を抑えた『ゼロカーボンツーリズム』なども実現したい。私たちの『もりぐらし』の取り組みを体感型のサステナブルリゾートとしてお客様に楽しんでいただくことはもちろん、この体験を持って帰り、日常生活でもサステナブルな取り組みを広げていただけたら、と思っています」と話している。

森林経営活動に基づくクレジット創出の仕組み

森林経営活動に基づくクレジット創出の仕組み

取材にご協力いただいた皆様

  • 徳田 圭太
    東急リゾーツ&ステイ株式会社
    地域創造統括部
    地域創造部
    徳田 圭太
  • 石原 宏基
    東急不動産株式会社
    ウェルネス事業ユニット
    事業戦略部
    石原 宏基
おすすめ記事

RECOMMENDED NEWS