東急不動産ホールディングスが行う環境取り組みを詳しくご紹介
GREEN PIONEER NEWS

「100%再生可能エネルギー」の風が吹く!
リエネ松前風力発電所

  • # 脱炭素社会
  • # 再生可能エネルギー
リエネ松前風力発電所

北海道函館市中心部から南西へ車で約2時間。北海道最南端の町である松前町の西側海岸沿いに、東急不動産が運営する「リエネ松前風力発電所」がある。タワーの高さ94メートル、風車の羽根であるブレードを含めた全高は148メートルと、日本最大級(※)の大型風車12基が立ち並ぶ光景は圧巻だ。

(※)開業当時

2022年中の「100%再生可能エネルギー化」達成

事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標とする国際的イニシアチブ「RE100」(目標達成期限は2050年まで)。日本からはアメリカに次ぐ66社(2022年3月現在)が参加している。東急不動産は、2019年に国内不動産会社として初めて参加した。RE100に参加する企業は年々増加しているが、そもそも企業が消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーとすることは簡単なことではない。ところが、東急不動産は2050年までという目標達成を大幅に前倒し、2022年中の達成を目標として打ち出している。なんと驚くべき大胆な姿勢だろう。まさに環境対策のリーディング・カンパニーとして世界に範を示した形となった。

この背景には、東急不動産ホールディングスが再生可能エネルギー事業を積極的に展開していることがある。東急不動産ホールディングスは、「脱炭素社会。循環型社会の実現と、環境に寄与するライフスタイル創造に取り組む」ことを、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」の柱としている。そして「地域をもっと元気にしたい」「社会をより良い方向へ導きたい」「地球環境を少しでも良くしたい」との想いを込め、2014年に再エネ事業の取り組みを開始し、2018年からは「ReENE(リエネ)」のブランド名で事業を展開している。2019年4月から運転を始めたリエネ松前風力発電所は、その代表的な事業の一つだ。

二酸化炭素削減へ「クリーンな風力」に集まる期待

近年、日本でも、大規模水害などの異常気象による自然災害が毎年のように起こっている。こうした異常気象の背景には地球の温暖化があり、その原因となっているのが温室効果ガスだ。中でも、石炭や石油の消費などによって大量に放出される二酸化炭素は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きい。

政府は、2021年4月、温室効果ガスを2030年度までに、2013年度比で46%削減する中間目標を立てた。その達成のために日本の電源構成のうち、再生可能エネルギーの割合を2030年度までに36~38%に引き上げることを目指している。ただ、日本の電源は石油や石炭などの化石燃料に大きく依存しており、再生可能エネルギーの比率は2019年度で18.1%、水力を除くと10.3%にとどまっている。こうした背景から、風の力で発電する「クリーンなエネルギー」というイメージが強い風力発電事業の拡大が大きく期待されている。

日本の電源構成比率

日本の電源構成比率

北の大地・松前。悩みのタネだった強風が「町の財産」に

松前町は江戸時代に北海道唯一の藩である松前藩があり、その城下町として発展。大量の商品を積んで日本海を往来した「北前船」の寄港地としても知られ、ニシンや昆布などの産物がここから全国各地へと運ばれた。松前城周辺の松前公園は「日本さくら名所100選」に選定されており、約250種1万本の桜を、4月下旬から約2か月にわたって楽しめる。

そうした観光資源に魅力はあるものの、主力産業である漁業が振るわず、かつては2万人いた町の人口も6320人(住民基本台帳人口、2022年6月30日現在)まで減少している。「雇用の場を広げ、人口減を少しでも食い止めることが町の大きな課題です」と石山英雄町長は語る。

松前町は、全国有数の強い風が吹く地域だ。特に冬季は、北西からの強い季節風が吹きつける。この強風はかつて、住民にとって悩みのタネでしかなかった。全国各地で太陽光発電、風力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギー事業を展開している東急不動産が、この強風に注目した。松前町での風力発電事業計画を2016年に開始、2017年に「リエネ松前風力発電所」の建設に着手。大型風車12基を作り、安定した電力供給を可能にする蓄電池システムを利用した発電所として2019年4月から運転を開始した。この発電所の定格容量は41MW。一般家庭の年間消費電力約24,000世帯分(※)に相当する電気を作り出している。

(※)世帯当たりの電力使用量4,573kWh/年を目安に算出(太陽光発電協会「表示ガイドライン2021年度」より)

国指定天然記念物の孤島・松前小島と風車

国指定天然記念物の孤島・松前小島と風車

石山町長は、「悩みのタネだった風が、まさか財産になるとは考えてもいませんでした」と笑顔で語る。松前町には、東急不動産のリエネ松前風力発電所の他にもさまざまな事業者が運営する小型の風力発電施設が約80基あり、松前町は今や「風力発電の町」だ。「風力発電は、町の税収増に貢献。建設の際には地元業者の仕事につながるほか、施設の規模が大きくなると新たな雇用の増加も期待できます。松前町は桜の町であり、北海道唯一の城がある所。渡り鳥が飛来する地域もあり、そうした景観と自然に配慮しつつ、さらに風力発電施設の増加を目指します」という。

北海道松前町長・石山英雄氏

北海道松前町長・石山英雄氏

地域振興の起爆剤「ゼロカーボンの町」を目指す

2018年の北海道胆振東部地震の際、北海道で最も大きな発電所である「苫東厚真火力発電所」など多くの発電所が停止したため、北海道全域で停電する「ブラックアウト」が日本で初めて起こった。この反省から、松前町は、東急不動産とともに、災害時に地域に風力発電所の電力を供給する「地域マイクログリッド」構想を進めている。2022年度中に町内の一部地域から供給可能になりそうだ。将来的には、災害時以外の通常時でも風力発電所の電気を使って、松前町全体で消費される電気を100%再生可能エネルギーとしたい意向だ。

松前町と東急不動産は2019年12月に「風力発電事業と地域活性化に関する 協定書」を締結。再生可能エネルギーを活用した地域振興を共に目指していくことを決めた。東急不動産では地上の風力発電の風車をさらに建設する計画を進めており、松前町では、陸上だけでなく洋上風力発電の誘致にも力を入れている。石山町長は「東急不動産は、街づくりのパートナーとして替えがたい存在。風力を利用した再生可能エネルギーを起爆剤として地域振興につなげていきたい」と話し、再生可能エネルギー先進地域として、炭素をいっさい出さない「ゼロカーボンの町」を目指している。

2018年9月6日、読売新聞社空撮

2018年9月6日、読売新聞社空撮

地域マイクログリッド概念図

地域マイクログリッド概念図

風力発電を身近にする夏祭り。地域の人たちが「見える電気」に

2022年8月6日、松前町役場前駐車場で、夏のイベント「プレミアム・サマーフェスト」が開催された。屋台が並び、お楽しみ抽選会などが行われ、多くの若い人や家族連れでにぎわった。「町を盛り上げようと、4年前から始めました」とこのイベントを主催する松前商工会青年部の佐藤光部長は話す。「東急不動産の方とプライベートで会ったときに、風力発電の電気を活用できないか、という話になり、このイベントの電力を東急不動産の移動可能な蓄電池でまかなってもらうことになりました」と佐藤さん。「ガソリンを使った発電機だと音がうるさくて、火事の危険もあります。それに対して蓄電池は事故の心配がなく、安全で静か。風力発電を利用した祭りはどこの町にもありませんし、エコな祭りとしてこのイベントの宣伝にもつながっています」とにこやかに話す。

松前商工会青年部の佐藤光部長

松前商工会青年部の佐藤光部長

会場の一角には、東急不動産のテントも設けられ、自転車を利用した「自家発電」を体験できるコーナーが人気を集めた。その中に東急不動産松前事業所の布目海大(ぬのめ・かいた)さんの姿もあった。布目さんは入社4年目。2021年4月に松前に赴任した。「風力発電所は建てて終わりではなく、東急不動産としてどう地域に貢献していくかが私たちの大きな仕事です」と布目さん。「街づくりや地域マイクログリッドといった大きな課題もそうですが、このサマーフェストのような、町の人たちと直接触れあえる身近なイベントにも積極的に参加して地域のお役にたちたい。電気というのは目に見えないものですが、それを、地域の方たちに、より見える形にしたいと思っています」という。

自転車を利用した「自家発電」を体験できるコーナー

自転車を利用した「自家発電」を体験できるコーナー

布目さんは町の小学校に出向いて授業をする「出前授業」も行っている。風力発電の仕組みを子供たちに分かりやすく伝え、風車を間近で見てもらう。「大きな風車は遠くから見ると何だか不気味な存在ですが、実際に近くから見てもらうと『大きくカッコイイ』と子どもたちの目が輝きます。地域の方に、風力発電に親しんでもらえるように、これからもさまざまなことに取り組んでいきたいと思っています」と布目さんは話している。

東急不動産松前事業所の布目海大さん

東急不動産松前事業所の布目海大さん

単に再生可能エネルギー事業の施設を建てるだけでなく、地域の人々と連携、協力し、地域活性化を目指していく。目先の利益にとらわれないが、それでいて、しっかりとビジネスとして成立させる。ここには東急不動産ホールディングスがグループ一丸となって取り組んできた企業姿勢が目に見える形で展開されている。リエネ松前風力発電所を訪ねて、そんな思いを新たにした。

風力発電を利用したお祭り「プレミアム・サマーフェスト」

風力発電を利用したお祭り「プレミアム・サマーフェスト」

「ReENE(リエネ)」とは、東急不動産が展開している再生可能エネルギー事業の事業ブランド。Re-Creating the Value(未来に、新しい価値を)」と「Edit Next Energy(次期の時代を作るエネルギーを)」という二つの志を組み合わせて2018年に誕生した。「脱炭素社会の実現」「地域との共生と相互発展」「日本のエネルギー自給率の向上」という三つの社会課題の解決を掲げ、これまでに全国84件(太陽光発電72件、風力発電10件、バイオマス発電2件)、定格容量1,337MWの事業を手掛けてきた(2022年8月末現在)。これは一般家庭約64.3万世帯の1年間の電力使用量に相当する。

取材にご協力いただいた皆様

  • 石山 英雄
    北海道松前町
    町長
    石山 英雄
  • 佐藤 光
    松前商工会青年部
    部長
    佐藤 光
  • 布目 海大
    東急不動産株式会社
    松前事務所
    布目 海大
おすすめ記事

RECOMMENDED NEWS