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TFHD GROUP MAGAZINE

私たちのライフスタイル創造

2020.6.01

「渋谷フクラス」
地域に寄り添い、ともに育つまちづくり

2019年11月に開業した「渋谷フクラス」(以下、フクラス)。渋谷駅西口の新たなランドマークとして誕生したフクラスは、単なる複合施設ではなく、地域の課題解決に貢献する役割も担っています。今回は開発に深く携わった鮫島本部長に、フクラスの開発の経緯や苦労、そして地域との連携を語っていただきました。

fukuras_chiiki_img01.png東急不動産
都市事業ユニット 渋谷プロジェクト推進本部 執行役員 本部長
兼 渋谷プロジェクト推進第一部統括部長  鮫島 泰洋

渋谷駅前の課題を解決する"玄関口"

渋谷フクラスの1階をバスターミナルにしたのは、事業立ち上げ以前からあった渋谷駅前の課題を解決するためです。

渋谷駅を発着するバスの数は、国内でもトップクラスです。しかし、渋谷駅西口には十分なスペースがなく、これまではバスが往来する中を歩行者が通行するという危険な状況でした。また、タクシー乗り場の場所もわかりにくく、タクシーが自由に乗り付けていたことも危険性を増す要因となっていました。

一方で、当社はフクラスを第一種市街地再開発事業かつ都市再生特別地区(以下、特区)を活用した事業として申請したいと考えていました。特区事業として認可を受けることができれば、高さや容積率の限度をもともとの規制にとらわれず、より自由度の高い事業計画として進めることができます。認可を受けるためには、事業を通じた地域の課題解決への寄与が条件です。これら両面の事情を鑑みて、駅前の課題を解決できるような施設をつくろうと、1階をバスターミナルにする構想が持ち上がったのです。

駅前立地施設の1階はその施設の顔であり、肝ともいえる重要なフロア。そこに店舗を入れないという決断をするのですから、社内でも相当な議論となりました。しかし、特区事業の大きな容積的メリット、そして何より、フクラスが渋谷駅前の課題を解決することで、渋谷の街をより魅力的にできるという期待から、最終的にはバスターミナル設置で意見は一致。それも路線バスだけでなく、空港リムジンバスも乗り入れるバスターミナルとし、フクラスを旅行やビジネスの玄関口として使ってもらえるようにしました。

特区は渋谷スクランブルスクエアの事業者と一緒に東京都に提案したので、関係者が増え調整など苦労もありました。しかし、その甲斐あって事業性と社会性を兼ね備えた複合施設ができたと思っています。

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空港リムジンバスの発着があるバスターミナルの設置に伴い、国内外の観光客がフクラスを訪れることになります。そこで観光案内所「shibuya-san」も設置しました。インフォメーション機能にとどまらず、地域と観光客の交流拠点やイベントスペースにもなる、新しい案内所です。

また、海外のビジネスパーソンの需要も想定し、17階にはシェアオフィスのビジネスエアポートが入居しました。同じ17階にはカフェ&バー「BAO by CÉ LA VI」がありますが、このルーフトップバーもフクラスの大きな特徴の一つです。

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四季のある日本では、夏の暑さ、冬の寒さが厳しく商業施設の屋上に飲食店を設けるのは難しいとされています。しかし、タイ・バンコクではルーフトップバーが非常に盛り上がっており、私もルブア アット ステート タワー※の最上階にあるバーを実際に訪問して「きっと商機がある」と確信しました。欧米では、日本のようにビジネスで会食をすることはあまりありませんが、ミーティング後にバーに立ち寄る文化があります。フクラスでも同様に、ビジネスエアポートで仕事をした人がそのままテラスで一杯を楽しめるようにできたら。その思いを込めて、ルーフトップバーのある施設づくりに挑戦しました。

※シーロム通り沿いにある5つ星高級ホテル。 64階の屋上に併設されている階にある世界一高いルーフトップバーは、映画のロケ地にもなり一躍有名になりました。

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地域とともに育つ施設になるために

フクラスのある場所は、渋谷中央街のちょうど入り口にあたります。ここに施設をつくるにあたり、私たちが組合の地権者とともに大切にしたのは、フクラスによって渋谷中央街にもっと人を招き入れ、街全体を盛り上げること。そのためフクラスには、足元の街並みと施設が一体化するイメージで、あえて屋上の設備も隠さず、街並みがそのままビルにつながったようなデザインを採用し、フクラス17階・18階のつくりも、フラットではなく、わざと街並みのようなギザギザなつくりに。屋上機器もあえて隠さず、「街っぽさ」を表すデザインの一部にしました。

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フクラスの横にある「渋谷中央街」のゲートも、商店街の要請を受け、フクラスのデザインに合わせて作り変えました。

また、フクラスの地下階には、地域荷捌き場「ESSA」が2020年より本格稼働を始めました。渋谷中央街には荷降ろしのための路上駐車が多く、歩行者にとって危険な状態でしたが、「ESSA」により地下でその作業ができるようにしました。

路上を整備したことで、2019年12月には、歩きやすくなった渋谷中央街を音楽とともに楽しんでもらおうと、ストリートライブイベント「渋谷中央街Music Street」を開催。新しい街の楽しみ方として、来場者だけではなく、出演者にも好評をいただきました。

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都市事業に限った話ではありませんが、今の時代、企業の利益を追求するだけの開発は長期的にみるとプラスにはなりません。各企業がSDGsを掲げ、ESG投資が注目される中、社会や地域住民の利益も考える企業こそが、今後選ばれる企業になっていくと考えています。

フクラスで表現すると、企業の利益はフクラスへの集客。社会の利益は、渋谷駅前が街として盛り上がること。そして、地域住民の利益は、安全で歩きやすい街ができること。この全てを実現できるよう、私たちは先に述べたような新しい取り組みを進めてきました。

地権者の皆さんも、「渋谷の駅前にできる施設なのだから、普通とは違うものにしたい」という意向が強く、私たちの新しい挑戦にも賛同してくださいました。

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旧東急プラザ渋谷から新東急プラザ渋谷へ
受け継がれる「大人のまち」

意外に思うかもしれませんが、もともと、フクラスのある渋谷中央街周辺は「渋谷」でイメージされるような「若者の街」ではありませんでした。渋谷中央街周辺は金融機関が立ち並ぶ街として発展したエリアであり、ビジネスパーソンが行き来する場所でした。また、周辺の住宅街からのバスが発着する場所でもあったため、どちらかといえば「大人のエリア」だったのです。

そんな場所にあって地元のお客様に愛されてきた旧・東急プラザ渋谷も、客層は大人が中心でした。そこで、新たに生まれ変わりフクラス内に誕生した東急プラザ渋谷も大人の客層をターゲットとすることになりました。駅前の他の施設との差別化を図る目的もありましたが、「大人をたのしめる渋谷へ」というコンセプトが設定されたのは「土地柄」でもあったのです。

フクラスは広域澁谷圏の中心拠点

フクラスは東急不動産ホールディングスグループにとって、広域渋谷圏の中心となる施設だからです。これから神宮前六丁目地区の再開発、渋谷駅桜丘口地区など、広域渋谷圏に施設が増えていきます。

私たちが目指す広域渋谷圏の街づくりは、自社の施設をつくり、そこに集客して終わりではありません。広域渋谷圏に複数の拠点を点在させ、その拠点間を巡っていただけるような街づくりが理想です。人が街を巡り歩く中で消費活動が生まれ、もともとあった商店街も含めて街全体が育っていく。その中で私たちグループも企業として育っていければ、渋谷はもっと素敵な街になると思います。

今後の広域渋谷圏での動きも楽しみに、皆さまにはぜひ新しくなった渋谷駅前を訪れていただければと願っています。

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