TFHD GROUP MAGAZINE

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歴史的建造物を次世代へつなぐ
"最新技術×環境配慮"で生まれ変わった「九段会館テラス」

保存・再生建築への挑戦

プロジェクト概要

2022年10月開業。鹿島建設(株)との共創により、登録有形文化財建造物である旧九段会館を一部保存しながら再建した「九段会館テラス」は、北の丸公園とお濠に面し、都内でも随一の眺望が特徴。北の丸公園の緑を借景にするテラスとして、また、旧九段会館を再度"照らす"という意味を込め「九段会館テラス」と命名し、その名称を残すことで、歴史的な価値を後世につなぎ、地域のシンボルをめざしたプロジェクト。

90年前の職人技と最新技術を融合

創建当時の意匠を維持・復原した宴会場
「九段会館テラス コンファレンス&バンケット」のバンケットホール 真珠

「九段会館テラス」は、創建当時の帝冠様式を最大限に活かして保存・復原を行なった保存部分と、皇居のお濠を臨み、loTを活用した地上17階建ての最新鋭オフィスとなる新築部分からなります。現代では入手や再現が困難な90年前の職人技と素材からなる旧九段会館は、当社グループの共創におけるオフィス開発力と鹿島建設(株)の技術力をかけ合わせ、可能な限りその歴史的価値を活かしながら高度利用を図る、新旧融合した「ここにしかないデザイン」として生まれ変わりました。保存部分は展示して眺めるだけの場にせず、あえて日常利用を続ける動態保存とし、旧九段会館の歴史を身近に感じながら過ごせる「伝統と革新が融合する場」としてご利用いただいています。

View Smart Glass

再生建築は、サーキュラーエコノミーにつながる環境配慮の取り組みです。資源の有効活用と既存建物の保存・再生建築により、新築建物建設と比較して約75%※ものCO2排出量削減につながりました。さらに、日本のオフィスビルで初めて米国View社のスマートガラス「View Smart Glass」を採用。建物屋上に設置したセンサーとAIを利用し、室内に入る自然光・熱量を最適化することで、一般的な低放射ガラスよりも電力消費量を最大で約20%削減できます。

また、東京ポートシティ竹芝で構築した「Smart City Platform」を活用しています。loTソリューションによる一元運用を行い、施設内セキュリティの向上やビルマネジメントの業務負担削減、施設の混雑緩和などにつながり、ご利用者の安心・安全に寄与しています。

保存実施部分についての比較。既存建物をすべて解体し新築した場合のCO2排出量82tに対し、既存建物を一部保存したことによるCO2排出量を21tと試算

オフィスワーカーの心身の健康に配慮

「九段会館テラス」では、「健康」をテーマに新しい働き方を提案し、さまざまな施設を導入しています。循環型社会の実現をめざす(株)モノサスと連携し、利用者と一緒に食物の生産から消費までを考えていく新コンセプトの職域食堂「九段食堂」を設置しました。ライフスタイルや健康に合わせたメニューの選択が可能となり、ウェルビーイングな食を提供しています。併設する会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート九段下」では、会員以外でも利用可能な飲食ゾーンを設け、コミュニケーションの場として活用されています。さらに、クリニックモールも併設し、こうした取り組みはテナントさまの健康経営への一助になり、好評を得ています。

自然と会話が生まれるよう設計された「九段食堂」

内科・歯科・耳鼻科・薬局などが集う「クリニックモール」

生物多様性・地域社会との調和を図る

外部との交流やオフィスワーカーが緑の力を取り入れることで生産性向上につながるような場として、緑に包まれた屋上庭園や「九段ひろば」、「九段こみち」を整備しています。
「九段ひろば」は、都心の中で人々が能動的に関わる緑地づくりをめざすデザインが評価され、「第32回緑の環境プラン大賞」の緑化大賞(シンボル・ガーデン部門)を受賞しました。
また、植栽は九段周辺の植生を考慮して選定し、歴史ある土地と地域の生物多様性が調和するよう配慮しています。

5階の屋上庭園「ルーフトップガーデン」

九段ひろば

Value chain topics
ーグループ連携で新たな挑戦ー

(左から)井口 卓、嶋田 宏、奥平 将生

開業から桜のシーズンを経て今に至るまで、当館には日々多くの人たちが訪れています。なかでも年配のご夫婦連れと思しきお客さまが懐かしそうに外観を見つめている光景は印象的です。それは私たちが「昭和初期の時代を色濃く残して九段下の景観を作ってきた大切な建造物を預かって管理運営している」責任を再認識する瞬間でもあります。旧九段会館は、開発時よりグループとして推進体制を強化し、各人のバックボーンや多くの知見を集結して、伝統と革新が融合した魅力ある「九段会館テラス」に生まれ変わりました。引き続き九段下のシンボルとして、末永く皆様に愛される存在であり続けるように尽力します。

九段会館テラス マネジメントオフィス
総支配人(東急不動産)
嶋田 宏

開業の1年前より東急不動産へ出向し、開業支援・立ち上げ準備に携わりました。文化財を管理する視点と開発者としての立場を踏まえることに当初は大変苦労しましたが、試行錯誤を繰り返し、無事に開業を迎えられた時は、今までに味わったことのない達成感を得ることができました。また、所属会社での経験を活かし、主に管理関係の協力会社とのディレクションをスムーズに実行できたと自負しています。今後はこの九段下エリア特性を活かし、地域に開かれた施設をめざし、利用者数の向上と地域住民の方の満足度向上に寄与する施設運営を行っていきます。

九段会館テラス マネジメントオフィス
副支配人(東急コミュニティー)
奥平 将生

「建築業」から「不動産業」へと全く異なる職種への挑戦となり、出向当初は自身に務まるか不安を覚えることもありました。しかし、事業を推進する中で、職種が違っても良いものを創る仕事に対して、根本的な捉え方は同様であると気付き、所属会社で培った提案力や組織統率力を発揮し、テナントさまから隠れたニーズを引き出すことで、お客さまの満足度向上につながりました。今後は更なるテナントリレーション強化はもちろんのこと、九段エリアに根差したシンボルとして、地域コミュニティ醸成を視野に入れたエリアの新しい価値創造をめざしていきます。

九段会館テラス マネジメントオフィス
(東急Re・デザイン)
井口 卓

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