2021統合報告書
トップメッセージ

「WE ARE GREEN」を
グループの旗印に、
誰もが自分らしく、
いきいきと輝ける未来へ

東急不動産ホールディングス株式会社
代表取締役社長

WE ARE GREEN。今年5月に発表した私たちの長期ビジョン「GROUP VISION 2030」のスローガンです。発表後、社内外からこれまでにない反響をいただき、私たちが伝えたかったことを知っていただくきっかけとなったことに、手ごたえを感じています。

今回、長期ビジョンを策定したのは、不確実な要素に満ちたVUCAの時代だからこそ、グループが進むべき方向性を示す「経営の羅針盤」が必要だと強く考えたからです。そこで、積み上げ型の計画ではなく、10年後を見据えてバックキャスト発想でグループのありたい姿を議論し、経営方針を取りまとめました。

長期ビジョンでは、グループの成り立ちを踏まえて当社の理念体系を再定義するとともに、私たちがめざす価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)を定め、ありたい姿を実現して株主価値・企業価値向上につなげる道筋を描きました。

冒頭のスローガンには、グループが展開する多様なグリーンの力を融合させ、新たな価値創造につなげていく私たちの想いを込めています。コーポレートカラーのグリーンを基調に、グループの幅広い事業や人財の多様性をグラデーションで表現しました。グリーンは環境やサステナビリティの象徴であるとともに、私たちがめざす「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」の象徴でもあります。若葉が芽吹き、それぞれの個性を活かして大きく育っていくように。「WE ARE GREEN」の旗印のもと、グループ一丸となって、価値を創造し続ける企業グループをめざします。

社長に就任して1年が経ちましたが、グループの変革は緒についたばかりです。来年5月には、2025年度に向けた中期経営計画の発表を予定しています。ここからさらにドライブをかけ、スピード感のある経営でグループのありたい姿を実現するため、決意を新たにしています。

一人ひとりが輝く「舞台」をつくる

2030年に向けて私たちがめざす価値創造のテーマは、「魅力あふれる多彩なライフスタイルの創造を通じて、誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」です。個人・社会・環境の変化を見据え、想定される世界を4つの視点でまとめました。

私たちが考える2030年の世界
  1. リアルの場は行く意味を問われる時代へ
  2. 環境貢献度で企業が選ばれる時代へ
  3. パーソナライズされた個客対応の時代へ
  4. ボーダレス化による共創の時代へ

個人の単位では、ソーシャルネイティブで環境意識の高いZ世代の台頭が、消費やライフスタイルのあり方を大きく変えていきます。共通の物差しではなく、個人がそれぞれの価値観で幸せを追求していく社会が訪れると予測しています。

社会の視点では、オンラインとオフラインの融合、都市と地方のあり方の変化など、場所や時間の概念が根本から変わっていくと考えています。

環境に目を向ければ、気候変動への対応や脱炭素化の流れが、地球規模で取り組むべき共通課題として高まっています。あらゆる境界が取り除かれていく世界において、事業の社会的意義を強く意識し、パートナーシップで価値を共創していくことが求められると認識しています。

こうした事業環境を踏まえ、一人ひとりが輝く「舞台」を提供することが、当社グループらしいお客さまへの提供価値につながると考えます。

事業ウイングの広さを強みに変える

ありたい姿の実現に向けた長期経営方針では、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築し、ROE向上とEPS成長によって株主価値・企業価値の向上をめざします。

そのための全社方針として、「環境経営」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を掲げました。この2つの柱こそが、当社グループの特色である事業ウイングの広さを、真の強みに変えるキードライバーになると考えます。いずれもグループを俯瞰する視点が不可欠であり、私自身がリーダーシップを執り、取り組みを加速させていきます。

加えて、従来からの関与アセット拡大モデルをさらに進化させるため、事業方針に「知的資産活用」と「パートナー共創」を掲げました。関与アセットから得られるノウハウ・データの収益化と、外部リソースの積極活用による事業価値の最大化を図ります。

これまでの当社グループは、どちらかといえば自前主義が強い傾向にありましたが、事業が高度化・複雑化した現代においては、最適解を求めて積極的に外部のパートナーと手を組むことが重要です。固定観念にとらわれず、外に目を向けながら、新たな事業機会の獲得につなげていきます。

⻑期ビジョン「GROUP VISION 2030」の全体像
WE ARE GREEN 価値を創造し続ける企業グループへ

環境経営で企業競争力を高める

米国がパリ協定に復帰し、国境炭素税の導入に言及したほか、国内においても菅政権が2050年のカーボンニュートラル実現を宣言するなど、脱炭素社会・循環型社会の実現に向けた国際的な流れが加速しています。企業においても環境への取り組みが、競争力に直結する時代に突入したといえるでしょう。当社グループは、1998年に環境基本理念を策定し、「緑をつなぐプロジェクト」や都市緑化・生物多様性保全に取り組むなど、早くから環境に配慮した経営を行ってきました。

長期経営方針においては、再生可能エネルギー事業での優位性を活かし、すべての事業で環境負荷の低減をめざします。気候変動に関しては、2030年にサプライチェーンを含むSBT1.5℃目標の実現、2050年にネットゼロエミッションの達成という高い目標を掲げています。今後も業界をリードし、国際的な動きと協調しながら、環境先進企業としての競争力向上を図ります。P.35参照P.35参照

同時に、当社らしいライフスタイル提案の一環として、「環境に寄与する快適な街と暮らしの創造」に取り組みます。環境経営の推進は、事業活動を通じて社会課題を解決するマインドの醸成にもつながります。グループ従業員一人ひとりが、現在、そして未来の社会に対する責任を肝に銘じて事業に取り組む所存です。

DXでサービスとしてのアセットへ

もうひとつの全社方針であるDXでは、「ビジネスプロセス」「カスタマーエクスペリエンス(CX)」「イノベーション」に取り組みます。デジタル化の不可逆的な流れは、当社が展開するあらゆるビジネス領域に大きな変化をもたらそうとしています。これまではバリューチェーンの上流を押さえることが競争力の源泉でしたが、デジタル時代には顧客接点が競争力の源泉となります。なかでもグループが持つ多彩な顧客接点を活かして、CXの向上による「感動体験」の創出に取り組みます。P.39参照P.39参照

当社グループは、さまざまなアセットを起点とした運営業、不動産の管理・仲介、東急ハンズなど、お客さまと直接触れ合う事業を多数展開しています。お客さまとの対話からユニークな事業を生み出せる点は、顧客接点が競争力の源泉となる時代に、他の総合不動産業に比べて大きなアドバンテージになります。

DXの推進には、グループ・外部連携が必須です。かつてIT改革の際に経験したように、断片的に最適解を追い求める「DXの罠」にはまらないよう、グループ横断で取り組みを進めます。

DXの進展は、「住む・働く・過ごす」という生活シーンのシームレス化を加速させています。
これからのデジタル時代は、「サービスとしてのアセット(Asset as a Service: AaaS)」の価値が重視されると考えます。都市のスマート化をはじめ、フィジカルとデジタルの融合を図り、 OMO(Online Merges with Offline)推進による先進的なサービスモデルの創造を通じて、アセットの持つ価値を高めていきます。

ライフスタイル創造を進化させる

これまで私たちは、「住む・働く・過ごす」を融合させて生まれる多彩なライフスタイルを、時間軸と空間軸の視点から提案してきました。P.29参照P.29参照

コロナ禍の影響もあり、「ライフスタイル創造3.0」として提唱してきた生活シーンの融合が、想定よりも早く進んでいると感じます。テレワークが普及し、多様な働き方が一般的になりました。働き方の多様化は、すなわち生活の多様化です。仕事と休暇を組み合わせたワーケーションやマルチハビテーションなど、生活シーンが 融合した暮らし方は、今後さらに広がるものと考えます。

私たちは、住まい方・働き方・過ごし方のそれぞれで多彩なソリューションを持つ事業ウイングの広さに、全社方針である環境経営・DXをかけ合わせ、これからの時代にふさわしい新しいライフスタイルを積極的に提案していきます。

渋谷駅桜丘口地区再開発計画(完成予想図)

広域渋谷圏のエリア価値を高める

当社グループが強みとする「ライフスタイル創造3.0」をエリア全体で取り入れ、新しいまちづくりを行っていく場が、私たちのホームグラウンドである広域渋谷圏です。

コロナ禍でテレワークが広がり、都市の人の流れは大きく変わりましたが、丸の内や日本橋などのエリアとは異なり、渋谷はもともと職・住・遊の多面的な魅力を有しています。街の自由闊達な魅力に惹きつけられるスタートアップにとって、変革期の今だからこそ、新しいイノベーションが渋谷で生まれる可能性を秘めています。こうした広域渋谷圏のエリア価値をさらに高めるため、都市開発とエリアブランディングの両面から積極的な投資を続けます。P.42参照P.42参照

東京の湾岸エリア・竹芝では、近未来を感じるスマートビル「東京ポートシティ竹芝」を中心に、最先端のテクノロジーを活用したスマートシティづくりに取り組んでいます。今後は、竹芝で培った都市OS構築のノウハウを渋谷へと展開し、都市のスマート化を進めていきます。P.44参照P.44参照

中期経営計画の振り返りと課題

2020年度までの中期経営計画は、新型コロナウイルスの影響により、財務目標は未達となりましたが、賃貸事業基盤の拡充やインフラビジネスの成長など、一定の成果を得ることができました。

一方で、「BSマネジメントによる効率性向上」「強固な事業ポートフォリオの構築」「労働集約型からの脱却」「自前主義からの脱却・人財育成」の4点を、現状の課題として認識しています。

最重要課題は、事業ポートフォリオの再構築です。今回、それぞれの事業が持つ社会的役割と成長シナリオの違いから、事業セグメントを資産活用型と人財活用型に再編しました。

資産活用型ビジネスでは、「東京ポートシティ竹芝」や「渋谷フクラス」などの大型プロジェクトが稼働し、安定収益基盤が拡充したため、次のフェーズでは循環型再投資を拡大し、収益性と効率性の向上をめざします。

人財活用型ビジネスでは、管理・運営ノウハウなどの知的資産や先進技術を活用し、労働集約型事業を知的資産活用へ変革することで生産性を高め、利益成長をめざします。

私が取り組むミッションと課題

純粋持株会社のトップである私のミッションは、事業環境の変化にあわせて中長期的な視点からグループの全体最適を図り、経営資源を適切に配分することです。事業会社の個別最適ではなく、事業会社間の枠を超えて事業を推進していける状態を構築するために、次の3つの課題に取り組みます。

1. 事業ポートフォリオマネジメント全事業共通の評価基準で各事業を評価し、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築を進めます。M&Aやアライアンスなどの外部資本活用も視野に、抜本的に事業を見直し、事業価値を最大化します。 P.60参照P.60参照

2. ガバナンス改革公平かつ透明性の高いコーポレートガバナンス体制を構築します。サステナブルな成長に資するガバナンス体制へ継続的改善を続けており、社外取締役の増員や多様性確保のほか、実効性向上の観点でも第三者評価を進めています。今後はプライム市場への移行を見据えて、一層の体制強化を図ります。P.66参照P.66参照

3. 組織風土改革もっとも重要な経営基盤が人財だと私は考えています。グループ従業員には、社会に向き合う使命感と高い倫理意識に裏打ちされた、プロフェッショナルな姿勢を持ってもらいたい。そして、私が先頭に立って一体感のあるイノベーティブな組織風土を醸成し、会社と従業員が担うべき役割を果たすことで、社会課題解決を起点とした企業価値向上に取り組みます。働き方改革や活力ある職場づくりについては、コロナ禍で多様な働き方が広がり、これまで以上に健康経営の推進が重要になっています。生活と仕事の融合が進むなかで、従業員が心身のストレスを抱えることのないよう取り組みを強化します。P.64参照P.64参照

信頼を超えて愛され続けるために

当社グループの企業価値は、あらゆるステークホルダーの満足度の総和であると考えています。なかでも私たち現役世代には、これからの社会を担う世代に、希望に満ちた世界と豊かな環境をつないでいく責任があります。そこで、再定義した理念体系では、新たに6番目のステークホルダーとして「未来社会」を明記しました。P.07参照P.07参照

若い世代の環境意識の高さには驚かされることがあります。環境先進企業として、私たちは未来の世代にどんなバトンを渡せるか。従来の考え方や慣習にとらわれることなく、未来志向で、これからの人たちに誇れる価値を創造していきます。

昨年のメッセージで、私たちが価値を創造し続ける企業グループであるためには、ステークホルダーから信頼され、愛され続けることが大切であると述べました。今もこの気持ちに変わりはありません。当社グループの商品・サービスに対して、理屈や信頼を超えた「愛着」があれば、自然とお客さまから選ばれ続けるはずです。実利だけではない情緒的な無形資産、いうなれば強いブランド力を当社グループの価値として積み上げていく必要があると感じています。

そのような状態をつくるには、まずグループ従業員が、自分たちの会社を好きになり、ロイヤルティを感じることが重要です。社会の一員としての自覚を持ち、多様な価値観を認め合い、果敢に新しいことにチャレンジしていく。そんな信頼性の高い組織をめざしたいと考えています。

一人ひとりが日々誠実に振る舞い、個人としての「信用貯金」を貯めていけば、その集合体が組織の信用になります。今、私たちがいただいている評価は、先人たちが積み重ねた「信用貯金」によるものです。私たちは、これを増やしていかなければなりません。

当社グループの原点は、約1世紀前、渋沢栄一らによって先駆的に行われた田園調布のまちづくりにあります。以来、「挑戦するDNA」を継承し、いつの時代にも、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組んできました。私たちは、この創業の精神を受け継ぎ、これからも社会とともに歩みを進めてまいります。

最後に、長期ビジョンで掲げた「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」を、私なりの言葉で言い換えるなら、それは誰もが「自分は幸せだ」と感じられるような社会です。一人ひとりが、それぞれの幸せを叶えられる明るい未来をつくりたい。そして、そのために当社グループがサステナブルな価値創造を続けることで、明るい未来の一端を担うことができると強く確信しています。

2021年3月31日終了年度(2021年8月公開)