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2020統合報告書 トップメッセージ

2. DX推進により、お客さまの体験価値を高めていく

「ライフスタイル創造」による社会課題の解決

当社グループの起源は、1918年に渋沢栄一らによって設立された田園都市株式会社にあります。当時、東京の都市化・人口流入が進み、住宅難の兆しが見え始めるなか、英国発祥の「田園都市構想」に基づいて、自然と都市の長所を併せ持つ田園調布を開発しました。以来、私たちは1世紀以上にわたり、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組む「挑戦するDNA」を継承し、不動産業を起点に事業領域を拡大してきました。

私たちの強みは、「多様なアセットと多彩なお客さま」「ユニークな事業を生み出す風土」「専門性の高い人財とノウハウ」という3つに集約されます。冒頭でも触れましたが、当社グループは他の総合不動産企業に比べて、お客さまと直接触れ合う事業が多い点が特徴です。幅広いお客さま接点を有しているからこそ、現場でお客さまのニーズの変化を敏感に察知し、ユニークな事業を生み出すことができるのです。私たちの価値創造は、まさにお客さまとの対話から生まれるといえます。

私たちの価値創造を象徴するキーワードが、新しい住まい方、新しい働き方、新しい過ごし方の提案を通じて、さまざまな社会課題の解決に取り組む「ライフスタイル創造」です。ライフスタイル創造は、3つのフェーズで進化を続けてきました。不動産というハコを起点にビジネスを展開した「ライフスタイル創造1.0」を経て、ハコを活かしたソリューションを提案する「ライフスタイル創造2.0」へ。そして今、私たちは、住む・働く・過ごすという垣根を超えて、あらゆる生活シーンを融合させていく「ライフスタイル創造3.0」を提唱しています。

いつでもどこでも働ける時代が訪れ、現代人にとってワークとライフの境界は曖昧になっています。働き方の多様化は、すなわち生活の多様化といえます。遊ぶ・学ぶ・憩う・創るといった「時間の過ごし方」も選択肢が豊富になり、画一的には語れない時代です。それぞれの人が、どのように働き、暮らし、そして過ごすか。豊かな時間や体験の提供を通じて、人々が心身ともに健康で幸せを感じられる社会をつくるために、「ライフスタイル創造3.0」の考え方こそが、現代を生きる私たちに必要とされていると感じます。

事業ウイングの広さを真の強みに変える

私たちはグループで幅広いビジネスを展開し、あらゆるライフステージ(時間軸)やエリア全体(空間軸)でのサービス提供を通じて、独自性のある価値創造を追求してきました。こうした事業ウイングの広さは、当社グループの強みであり、社会やお客さまのニーズの変化とともに、さまざまな価値創造を積み重ねてきたからこその広がりでもあります。

一方で、あらゆる生活シーンが融合した「ライフスタイル創造3.0」を実現していくためには、事業ウイングの広さだけでは足りません。それぞれの事業の厚みや事業間のシナジー発揮が不可欠です。純粋持株会社としての当社の役割は、事業環境の変化に合わせて、中長期的な視点からグループの全体最適を図り、経営資源を適切に配分することです。その上で、グループ各社が最大限に力を発揮できるよう、それぞれの事業会社に業務執行を委ねます。こうして事業会社における戦略実行の迅速化を図るとともに、事業会社間の枠を超えて事業を推進することで、当社グループが持つ事業ウイングの広さを真の強みに変えていきます。具体的には、事業会社の個別最適ではなく、常に全体最適の観点から、続ける・見直して続ける・やめる事業を精査し、事業ポートフォリオの再構築に取り組む方針です。

デジタル化により変化する社会

私たちは今、パンデミックの最中にあり、まさに予測不可能な要素に満ちたVUCA※1の時代を生きています。こうした変化の激しい不確実な時代だからこそ、世の中の動きを俯瞰し、長期視点で私たちが取り組むべき社会課題と向き合う必要があります。少子高齢化が進む国内では、生産年齢人口の減少による労働力不足・採用難が顕在化しています。労働集約型である管理業や運営業を営む当社グループにとって、極めて重要な課題です。

技術革新の飛躍的進展によって、お客さまのニーズも変化しています。特に今後の社会を支えていくZ世代※2は、幼い頃からインターネットやSNSに親しんできたデジタルネイティブです。個人主義を重んじる傾向にあるといわれており、価値観の多様化や個別最適化がさらに進むものと考えられます。私たちが提供する商品・サービスも、画一的なものから、より一人ひとりのニーズに合ったソリューションへと変えていくことが求められます。当社グループが展開する事業領域においても、業界外のプレイヤーが市場を席巻する可能性があります。私たちは未来への想像力を豊かに働かせ、正常な危機感を持ち続けなければいけません。

DX推進で大胆なビジネス革新を

このような危機感から、かねてより構想していた変革を大胆に実行するため、今年4月にDX推進室を設置し、事業のデジタル変革を今後の成長戦略の柱に位置づけました。「デジタル活用による業務効率化」「お客さま接点のデジタル化」「デジタルによるビジネスモデル変革」を三位一体で推進しています。DX推進の目的は、業務プロセス、組織、企業文化・風土を変革し、競争優位性を確立することにより、お客さまだけでなく、従業員・取引先など、すべてのステークホルダーにメリットをもたらすことです。

繰り返しになりますが、当社グループの特色は、お客さまとの接点を長期にわたり豊富に有している点にあります。この強みを活かして、グループ内に集積するデータを活用し、営業効率・業務効率の向上を図るとともに、グループ横断的なビジネスモデル変革を促すことで、企業価値の向上を実現していきます。前述の「ライフスタイル創造3.0」を追求することは、お客さまの体験価値を高めることであり、DXはそのために有効な手段であると考えています。(図1.DX戦略と「ライフスタイル創造3.0」)

今後はグループ内のデータ活用やスマートシティなどでの取り組みを通じて、フィジカルなハコである不動産にデジタルを用いた付加価値の創出をめざします。当社が取り組むスマートシティのフラッグシップとなるのが、今年開業した「東京ポートシティ竹芝」です。近未来を感じるスマートビルで、新しい働き方と住まい方が融合した都市型ライフスタイルを提案しています。当社で過去最大規模となるオフィスタワーには、ソフトバンク株式会社が入居し、最先端のテクノロジーを活用したスマートシティの構築に共同で取り組んでいます。東京都から「スマート東京」における先行的なモデルプロジェクト※3にも選定されました。これからの街づくりには、テクノロジーの力が欠かせません。リアルタイムデータの活用、ロボティクス、MaaS(Mobility as a Service)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、5Gなど、最先端の技術を用いた実証実験を行い、竹芝からDX戦略を体現した次世代の街づくりを発信していきます。

図1.DX戦略と「ライフスタイル創造3.0」

図1. DX戦略と「ライフスタイル創造3.0」

変革を実行するための基盤づくり

DX推進室では、担当取締役のもと、経営企画やIT部門と有機的に連携を図りながら、「ビジネス×IT(デジタル)」を主導し、DXの取り組みを迅速に推進しています。各事業会社の担当者が参加するグループ横断組織を立ち上げ、情報共有会やテーマ別分科会を通じて課題解決に取り組みます。(図2.DX推進体制)

人財育成・確保については、DX人財に必要な能力を「既存事業の知見をもとに、新しいデジタル技術を起点としたビジネスデザインを作り出すこと」と定義し、社内研修やDXに関する情報発信を行っています。中途採用の強化も含め、人財への投資を進めています。DX推進には、社内外のリソース活用に加え、社内IT基盤の整備・強化を進めていくことも重要です。CVC(Corporate Venture Capital)を通じた投資や社内ベンチャー制度を用いた新規事業創出などにより、DXの取り組みを加速させていきます。また、経済産業省がDXレポートで示した「2025年の崖」問題※4を見据え、既存システムを評価、必要に応じて更新し、データの可視化と利活用ができるプラットフォームの構築をめざします。施策だけでなく、組織構造や風土も、DXを推進するための重要なドライバーとなります。こうしたグループ全体の革新を図る取り組みまでを含めてDX戦略であると認識して、変革の実行に努めます。

図2.DX推進体制

図2.DX推進体制

※1.VUCA(ブーカ):Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなげた言葉で、予測不可能な社会経済環境をさします
※2.Z世代:1996年~2010年頃に生まれた世代の総称。2000年代に20歳を迎えた「ミレニアル世代」に続く世代として、その価値観や特徴が注目されています
※3.スマート東京:東京都が公募する「スマート東京」の実現に向けたプロジェクトに、「Smart City Takeshiba」が採択されました。先端技術などを活用した分野横断的なサービスの都市実装をめざします
※4.「2025年の崖」問題:経済産業省は2018年に発表したDXレポートのなかで、今後、日本企業でDXが進まないと、2025年以降に最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しました