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2020統合報告書 トップメッセージ

1. 未曾有の危機をチャンスに変え、グループの変革を進める

まず、このたびの新型コロナウイルス感染症による影響を受けられた皆さまに謹んでお見舞いを、また、医療関係の方々や社会インフラの維持に尽力されている皆さまには心より御礼を申し上げます。

当社グループは、商業施設、ホテル・リゾート施設、フィットネスクラブ、シニア住宅など、多くのお客さまと接点を有するBtoC事業を展開しており、再生可能エネルギーの供給などのBtoB事業も含めて、安全安心な暮らしを守る社会インフラの一翼を担っている責任を、改めて重く受け止めています。全国の運営施設では、お客さまへのサービスを継続するために、多数のエッセンシャルワーカーが働いています。最前線で努力を続けるグループ従業員を誇りに思うとともに、引き続き、感染拡大防止と安全確保を最優先に、グループの総力を挙げて事業活動の継続に全力で取り組んでまいります。

コロナ危機で求められる変革のスピード

私は今春、代表取締役社長に就任しました。純粋持株会社の代表を務める私に課された使命は、中長期的な視点からグループの全体最適を追求し、企業価値の向上とサステナブルな成長をめざすことです。当社グループが、あらゆるステークホルダーから、ひいては社会全体から必要とされる存在になる、その道筋を作りたいと考えています。

今年度は、2017年度から取り組んできた「中期経営計画2017-2020」の最終年度にあたりますが、パンデミックの影響を受け、従前から掲げてきた財務面での目標指標は、いずれも未達成となる見込みです。ウィズコロナ、アフターコロナで各事業にどのような影響が生じるか、来年度以降の中長期経営計画の議論を進めていますが、財務規律を維持しながら収益力の強化を図り、株主価値と企業価値の向上をめざす考えに変更はありません。今回のような大きな危機の後には、社会全体の価値観を変えるパラダイムシフトが起こると考えられます。アフターコロナの世界を見据えて、グループの変革を強力に推進していく決意です。コロナ危機により、私たちが考えていた社会やビジネスの変容が、想定よりもかなり早く訪れることになったともいえます。それゆえ、これまで以上にスピード感を持って変革を進めることが重要だと日々気を引き締めています。

過去に乗り越えてきた経営危機

当社グループは、過去にも何度か大きな経営危機に瀕し、そのたびに自らを変革することで難局を乗り越えてきました。私が東急不動産に入社した1982年以降、最大の危機は1990年代初頭のバブル崩壊です。土地神話が崩壊し、地価下落により当社グループは深刻なダメージを受け、これを機に、従来の郊外型戸建住宅の長期開発から、オフィスや商業施設などの賃貸業へと事業構造の転換を図りました。

バブルの負の遺産を清算し、ようやく成長軌道に乗って事業を拡大し始めた2008年、今度はリーマン・ショックが発生しました。世界同時株安が国際的な金融危機を招き、当社グループにおいても多額の損失処理を強いられるなど、バランスシートの適正化に全力で取り組みました。この間、2011年には東日本大震災が発生し、日本全体を衝撃が覆いました。当時の私は、東急不動産の危機管理担当執行役員という立場で、全社のBCP(事業継続計画)策定に取り組み、従業員の安全確保や被災者支援に奔走しました。

リーマン・ショックによる影響が収束を見せ始めた頃、「同じ危機は二度と繰り返さない」という経営陣の強い信念のもと、東急不動産が組成した2つのREITを上場させ、循環型再投資モデルを一段と加速させる仕組みを構築しました。2013年には純粋持株会社である当社を発足し、グループ経営基盤を強化。以降、2020年度までの中長期経営計画を策定し、広域渋谷圏をはじめとした優良な賃貸資産への投資を加速するなど、グループの安定的な成長を実現してきました。

過去の経営危機から私が学んだことは、安定収益基盤と財務基盤の重要性です。いったん経営危機に陥ると、状況が収束して立ち直るまでに数年は要します。組織風土への影響も考慮すると、その損失は甚大です。そうならないために、日頃から着実に安定利益を積み上げていくことが、いかに大切かを痛感してきました。

今こそ焦るな、周囲に惑わされるな

今回のコロナ危機は、過去のバブル崩壊やリーマン・ショックと違い、金融発ではない外的要因で発生しています。多額の有利子負債を抱え、すぐにでも資産を売却しなければならなかった過去の経営危機とは異なり、持株会社化以降、着実に積み上げてきた安定利益のおかげで、攻めに転じることができるチャンスでもあると考えています。当社グループは、これまでも収益構造を転換しながら、市況や環境の変化に柔軟に対応してきました。今回の危機においても、足元ではBtoC事業を中心とした売上の減少、コストダウンに耐えながら、アフターコロナの世界を自分たちの手で描き、次世代のビジネスの芽を紡いでいくことで、新しい世界が開けると信じています。

メディアでは、オフィス不要論やインバウンド全滅といった事業環境に影響のある極端な報道が見受けられますが、こうした局面では刹那的な情報に流されず、しっかりと地に足をつけ、本質的な変化を捉えて行動すべきだと考えます。過去に乗り越えてきた経営危機の経験も踏まえて、社内では「今こそ焦るな、周囲に惑わされるな」というメッセージを発し、私自身も常に長期的かつ俯瞰的な視点で打ち手を考えるようにしています。

渋谷のポテンシャルは変わらない

私たちのホームグラウンド・渋谷では、長年の課題であったオフィス不足の解消に取り組み、2019年にはオフィスビル「渋谷ソラスタ」および大型複合施設「渋谷フクラス」が竣工しました。コロナ禍を受けて、在宅勤務やテレワークの普及が進み、オフィスのあり方も変化しています。働く場所や働き方の選択肢が増え、改めて「集まる場所」の意義が見直され、Face to Faceでのコミュニケーションの必要性を説く声も多く聞かれます。私はこうした議論に対して、オフラインかオンラインかという二元論ではなく、それぞれのよさを活かした、新しい時代にふさわしい働き方を世の中に提示していくべきだと考えます。そのためのひとつのショーケースが、当社が入居する「渋谷ソラスタ」です。ここでは、私たち自身が新しい働き方を実践し、さまざまな実験的な取り組みを行うことで、お客さまに多様なワークプレイスを提案しています。

渋谷は、もともと多様性に満ちた多面的な街です。映画や音楽などの文化的な基盤に加えて、ファッションや最新のトレンドを発信する有数の商業地として発展し、そこに、クリエイティブコンテンツやスタートアップが集積して、優良なオフィスストックが加わりました。まさに多彩な都市機能を備えている点が、丸の内、日本橋、六本木といった他のエリアにはない独自の魅力につながっています。

さらに、渋谷を中心に青山、表参道、原宿、恵比寿、代官山などの個性豊かな街が集まり、「広域渋谷圏」を形成しています。私たちは、こうしたエリア全体で価値を高める「広域渋谷圏構想」を推進し、長期持続的な街づくりに取り組んでいます。コロナ禍で新しい生活様式が求められるなかにあっても、その魅力は変わらないと考えており、これからも積極的な投資を続けていく方針です。